++ 沖縄の深い闇  行政解剖は法的に行えなかった ++


2006.3.17 加筆 2006.3.17初版

沖縄の深い闇  行政解剖は法的に行えなかった

s★お知らせ: 論点整理 もくじ に新規追加しました  2006.7.27 

野口さん事案では「行政解剖が行われた」と政府答弁がされた。

実務に詳しいはずの縄田修・警察庁刑事局長の答弁を聞いてもその行政解剖の意味が理解できず、ましてや沓掛哲男・国家公安委員会委員長の答弁に至っては意味不明であった。

 そのために会議の印象としては、説明する基本能力が欠如しているのか、はたまたその他の思惑があってあやふやな答弁に終始したのかはそれぞれ両人に聞かないとわからないが、いずれにしても「解剖の手続き」がぞんざい・あいまいにされていると感じていた。
そこでそのテーマをもう少し踏み込んで考察してみた。
 いかんせん私は医学とは無縁の門外漢であるが、そう言ってみても何も進展がないので死体解剖保存法を手始めに解きほぐしてみる。 なにぶんにも誤解、無知によって記述がされている部分があるやも知れないが、皆様の忌憚のないご指摘をいただけたら幸いである。


野口さん事案ではどの法律を根拠にして解剖がおこなわれたのか?
沓掛哲男・国家公安委員会委員長は下記の国会答弁でも 「行政解剖を実施したものと承知いたしております。」 と繰り返し述べている。
また、同じ国会答弁で 「●沓掛 えー、根拠は、死亡、死体解剖保存法に基づいて行ったものでございます。」 と解剖の根拠法が死体解剖保存法であったと述べている。

しかし沖縄には死体解剖保存法第8条で設置することができる監察医制度がそもそも作られていない
制度がないゆえ、監察医は一人も存在しない。

監察医が存在しないのだから法第8条を拠り所としている監察医しか行えない行政解剖が存在するはずもない。
よって、「行政解剖を実施した」という政府答弁は誤りである。


なぜ政府が行政解剖にこだわっているのか?その理由
国会答弁を見ていると、はじめから「法7条を根拠に解剖をやった」と説明しておけば「あんなに口ごもらなくてもいいのに」と思う。しかし、遺族には「行政解剖でやる」と承諾を取ってやっているわけで、いまさら「行政解剖ではありませんでした」とはいえない事情がある。

ここからは私の先の解釈に通じるが、

    警察には根拠法はなんでもいいがどうしても解剖をやらねばならない理由がある。
    司法解剖は自ら事件性はないと断定しているので理論的に出来ない。

    それなら法7条のいわゆる「承諾解剖」を持ち出して「解剖をやらしてください」と迫ったらどうか?
    しかし、「なんでやるんですか!?」「出血多量でしょ!?」といわれたときにはそれで話が終わってしまう恐れがあった。

    そうなると残るは法8条を拠り所とする「行政解剖」しかない 。
    沖縄には監察医制度自体がないことは分かり切るほど分かっていて、あとで問題になることもはじめから承知していた。
    しかし、それでも解剖はやらなければならなかった・・・・・・。

この解釈はいまでもブレておらず、あんな無謀ともいえることをあえてしているのにはそれらを越える相当な理由がなければ説明がつかないからである。

死体解剖保存法とは、かいつまめば死体の解剖が法的に出来る人を定めて、死因調査が適正に行われることを縛っている法律である。ちゃんとした手続きを踏まないと解剖をさせないよ!という法律である。
第八条  政令で定める地を管轄する都道府県知事は、その地域内における伝染病、中毒又は災害により死亡した疑のある死体その他死因の明らかでない死体について、 その死因を明らかにするため監察医を置き、これに検案をさせ、又は検案によつても死因の判明しない場合には解剖させることができる。但し、変死体又は変死 の疑がある死体については、刑事訴訟法第二百二十九条 の規定による検視があつた後でなければ、検案又は解剖させることができない。
 前項の規定による検案又は解剖は、刑事訴訟法 の規定による検証又は鑑定のための解剖を妨げるものではない。
この8条は、監察医制度を作れる条文だが、沖縄にはその制度がないので野口さん事案ではノータッチの条文のはずなのだが、警察がへんなことをやっているのでこの法8条がいっぱい登場して話を一層複雑にしている。うまく説明できてないことはご勘弁くだされ。

しかし、解剖を行ったことは事実であるので、その法的根拠を見付けなければならない。次の死体解剖保存法第7条しかない。

第七条 死体の解剖をしようとする者は、その遺族の承諾を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合においては、この限りでない。
この7条ではその他の要件が満たされてさえいれば、遺族の承諾・OKがあれば解剖に取りかかれると定めている。事実、野口さん事案では遺族の承諾をとっている。

よって、以上のことから沓掛哲男・国家公安委員会委員長、縄田修・警察庁刑事局長は国会答弁で「行政解剖を行った」と何度も繰り返したがそれは「行政解剖」ではなく、死体解剖保存法第7条にもとづいたいわゆる「承諾解剖」だったにすぎず、虚偽であったことが分かる。
後になって準行政解剖とういう単語を持ち出しているようだが、どんな単語を並べて説明をしようともこの法第7条を想定しているはずだ。なぜなら根拠になる条文はこれしかないからだ。

なお、この条文には除外規定として1号から7号まであるが野口さん事案ではいずれにもひっかからないので、この第7条第一項が適用される。

ちなみに解剖には費用がかかる。20万〜30万円かかると言われている。
すると費用支出の法的根拠がないこの解剖で、もし行政がこの費用を支出した場合には訴訟が起るかも知れない。

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【 国会議事録 】


「第164回国会 予算委員会 第6号(平成18年2月7日(火曜日))13:40〜より抜粋。こちらのページを引用させていただいた。会議の登場人物は委員長:大島理森、理事:細川律夫、国務大臣(国家公安委員会委員長)(防災担当):沓掛哲男、政府参考人(警察庁刑事局長):縄田修である。
なお、読みやすくするために大島委員長の発言は省略した。 またこれ以後質疑がつづくが先のページでも取り上げていて重複するので省略する。

下の答弁の前に細川議員が「自殺であるのか、他殺であるのかよく分からない。結論はどうであったのか」と問うている。

●沓掛 お答えいたします。お尋ねの事案は平成18年1月18日に那覇市内のホテルにおいて、会社役員である男性が腹部等に、より、出血した状態で発見され、病院に搬送されたのち死亡したものであると承知いたしております。沖縄県警察においては遺体や現場の状況、解剖所見、行政解剖ですが、解剖所見、それから関係者からの聴取など、さまざまな角度から慎重に真相究明にあたり、その死因については犯罪に起因するものではないと判断したものと承知いたしております。
ここで「行政解剖」を行ったと述べた。

●細川 司法解剖はされなかったんですか。
●沓掛 はい、分かりました。はい。はい、はい。遺体や現場の状況、あるいは関係者からの聴取結果などから、死因……(そうですね。そうですね。はい)死因については犯罪に起因にするものではないと判断し、しぼう、司法かいほうは、解剖は実施しておりませんが、死因の究明の慎重を期するためご遺族の承諾を得て、解剖、行政解剖を実施したものと承知いたしております。
ここでも「行政解剖を実施した」と明言している。

●細川  なぜ行政解剖をされたのですか、それでは。
●沓掛  一般的に申し上げれば、死体が発見された場合、警察への届け出が当然あるわけでございますが、この場合、三つに分類されます。一つは死亡が犯罪によ ることが明らかな場合。それから変死体のような場合。犯罪による死亡ではないかという疑いのある死体。それから三つ目が死亡が犯罪によらないことが明らか な場合、というふうに分けられます。
この場合において、いろいろな状況から犯罪によらないことが明らかな場合ということでございまして、そういたしますと、警察による死体見分が行われます。さらにその中において、いろいろな行政の判断で、行政の責任で、行政的な目的で、そういう解剖をすることがあります。例えば、中毒症で、…が起きたとか、あるいは伝染病が起きたとか、そういういろいろなことがありますので、そういう場合等において、家族の了承を得て解剖することはあります。その行政解剖を行ったものでございます
ここでも「行政解剖を行った」とゆっている。家族の了承を得て・・・とゆっているが、ちゃんと理解しているのか、他の思惑で臭わせたかっただけなのかわからない。どうもわかってなくて答弁している感じを受ける。

●細川  いま、伝染病、あるいは中毒、そういうおそれもあるから解剖すると、そういうことでこの野口さんの遺体は解剖されたんですか?
●沓掛  ま、あの、行政解剖する際の、…ときには、いろいろなものがあるわけでございますが、まーあのー、分かりやすいかたちでと思ったので、三番目のいまの例を挙げたわけですけれども、まーあのー、念には念を入れてということで、一応外見上、見たところ、そういう犯罪によるものではないということで第三分類にされ、しかしながらさらに念には念を入れてということ、…というか、ま、いろいろなものについて、さらにそういう解剖ということが、できれば行政的な目的であくまでも行政責任で、行政の目的で出されたものであります。
なぜか「行政的な」と形容詞がでてきて、行政解剖とは違うことを強調して従来の答弁を打ち消そうとでもしたのか?
ここまで来るとなにゆっとるのかさっぱりわからないので、コメントも付けられない。

●細川 私はこの野口さんの死体というものについて、犯罪性があるかどうか、犯罪性がないか、この区分けというのがたいへん大事だ。それがいま長官の、大臣の答えでは、まず最初に「犯罪ではない」と、そういう区別から、…をしておいて、さらに行政解剖をしたと、こういうふうに言われたと判断しますが、それでいいですか?
●沓掛  まー、あのう、死体の状況、それからその部屋の状況、それにあたって最初に発見された方々、その他いろいろな状況から判断して「これは犯罪によるものではない」という、まず判断がございました。ま、その上でですね、また一応、一人でおられた中で刃物でいろいろな所を切断して死んでいるわけですから、まー、ひとつ、そういうかたちのものについては、どうしてかということで、まー、行政的な解剖を行ったということだというふうに理解しております。
ついに行政的な解剖を行ったと言い方を変えた。なんで変えてきたのだろうか、やはり当人は理解できてないのだろう?

途中省略

●大島 細川律夫君。
●細川 そういう説明は、私はよく知った上で質問してんですよ。行政目的で解剖したという、その行政の目的はなんですかというふうに聞いてんです。
(ヤジ:このやろう)…(答えるの)はー、大臣、大臣(沓掛大臣を指さす)。[場内騒然(駄目だよ!)]
●大島 沓掛大臣。沓掛大臣。沓掛大臣。ちょっと大臣とよく相談して、大臣、大臣が答えるようにしなさい!
(そうだ! そうだ!) ちょっと、委員外の傍聴者!静かにしてください! 静かな深みのある論議をしたいと思います。
いま大臣からまず答弁して、それから……。はい、大臣どうぞ。……大臣。
●沓掛 えー、根拠は、死亡、 死体解剖保存法に基づいて行った ものでございます。そのものは、(以下読み上げ)死体の解剖および保存ならびに死因調査の適正を期することによって、公衆衛生の向上を図るとともに医学の教育または研究に資することを目的といたしております。
ここで、沓掛大臣は「死体解剖保存法に基づいて行った」と明言した。

以下省略
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